3人が本棚に入れています
本棚に追加
あの時のことは、正直よく覚えていない。
思い出そうという気もないし、思い出さなくてよい気がする。
ただ
私を見つめる悲しそうな目だけは、時が経っても脳裏に焼き付いている。
少女のままで
ずっと夢を見ていたい。
その願いは、果たして間違ったものなのだろうか。
ーーー
きっと幸せすぎたのだ。
二人でいる時間が心地よすぎた ただそれだけのこと。
歯車が少しだけ狂ってしまった ただそれだけのこと。
「お母さん。これがメリーさん?」
少女は自然な笑みを浮かべて人形を抱きしめる。
その姿は あの時の私とあなた。そのものだった。
「そうよ。大事にしてあげてね。」
新しい服に身を包んだ人形は、もう私を見ていない。
だけど
今度は幸せになってほしい。
少女と一緒に 幸せになってほしい。
「今日からお友達よ。」
どこかで聞いたことがある言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!