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(その7)2月、三人はスーパーで(3)
冬晴れの日曜日で、キンと冷えるが、陽射しが触れると心地いい。南條と巽は手を繋いで家へと帰っていく。そして、巽の下げているトートバッグの中には、マフラーをしっかり巻いたハム太くんが座っているのだ。
「みんなでお出掛けも楽しいね、先生! ハム太くん!」
笑顔の巽に、南條も笑顔だ。
「ああ。美味しそうなパンも買えたしな。……ハム太くん、ほんとはあのハムスターのパン、欲しかったんじゃないのか?」
「そうなの、ハム太くん?」
(ちょっとね)
「また今度買ってあげるね。ハム太くんは、そろそろお友達か、パートナーが欲しいんじゃない?」
(ぼくはパートナーなんかいらない)
「そう? まだ早いかあ」
(友達は、巽と先生がいるもん。だから、いらないよ)
巽は微笑んで、トートバッグの上からハム太くんの体をそっと抱きしめた。
「ありがとう、ハム太くん。ハム太くんは大事な大事な友達だよ。ねえ、先生?」
「ん? そうだぞ。ハム太くんも、おれたちを友達だと思ってくれてるのなら、おれはうれしい」
微笑んだ先生の頬に、ハム太くんはちゅっとキスする。南條と巽は笑って、ハム太くんは恥ずかしそうだ。ふいに、ハム太くんが言った。
(ねえ、巽。先生に、ぼくのどこが好きかって訊いてくれる?)
「え? うん、いいよ。ねえ先生、先生はハム太くんのどこが好き?」
先生は迷いなく答えてくれる。
「まるっこいボディに、つぶらなおめめに、モフモフの口に、可愛いところに、優しいところに、クールなところ!」
ハム太くんは目をきらっと輝かせ、
(先生大好き)
胸の内で、愛をつぶやく。
ちなみに、
「先生はおれのだよ、ハム太くん!」
心配して釘を刺した巽に、
(先生はみんなの先生だもん)
晴れやかに答えるハム太くんだった。
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