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(その3)12月、なにもない朝に(2)
その後、顔を洗い、口をゆすぎ、着替えて巽は朝食の席へ(ちなみに、うすうすの髭は一昨日剃った。剃ると数日はつるつるのままだ。体毛が薄い、典型的なオメガ男性のタイプである)。
先生が用意してくれていた、トーストにハムエッグ。バナナとりんごの上に無糖のヨーグルトを掛け、蜂蜜をたらり。ホットのミルクティー。美味しい朝食を前に、巽はもりもりとごはんを食べる。
今日は日曜日。ベランダに通ずる窓の向こうに雨が降り出したのが見えた。六甲山も濡れてうなだれ、その緑は黒く濃い。山はざわざわと唸りをあげていた。
「今日はせっかくのお休みなのに、どこにも行けないね」
巽がぽつりと言えば、南條はコーヒーを飲みながら、「家でできることをするか」と答える。
「DVDを見るとか、トランプするとか」
「いいですね。ハム太くんは、なにしたい?」
巽がソファに座るハム太くんに尋ねると、ハム太くんは(ぼんやりしたい)と答えた。
「ぼんやりしたいのかぁ。でも、おれたちはそれじゃ退屈だよ。……あ、そうだ」
ん? という顔をした南條に、巽はローテブルに駆け寄って、昨夜の復習に使っていたルーズリーフの、新しいページとシャーペンを持って戻ってきた。朝食が半分残っているままで、食卓にルーズリーフを広げる。
「家族計画は?」
「家族計画?」
「はい。今、おれは二十歳でしょう? 二十二歳までに初めての赤ちゃんを授かって、それから二、三年後までにもう一人赤ちゃんが欲しいな。子どもに少し手がかからなくなったら、ハムスターが飼いたいです」
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