1  うまれつき

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1  うまれつき

先日、東京を大きな台風が襲った。都内の被害は大きく、通っていた高校も二日間休校になった。まあ電車も止まってたから行けなかったけど。 だがそんなのは関係ない。 父と母が離婚した。父の浮気が原因だ。優しい父だったし、ちょっとは悲しかったが、母のヒステリックなさまを見るのはもっと悲しかった。まあ母はそれからかなりおかしくなって、実家の祖母の家で厄介になっている。あたしは学校もあるし、それ以来このマンションでひとり暮らしだ。 だがそんなのは関係ない。 あたしには悩みがあった。小さいころから、だれにも相談できず悩んでいた。あたしにはうまれつき異能がある。超能力ってやつだ。小さい頃はそれは小さなものだったが、いま十六歳になって、それはかなり強力なものになってしまったと思った。それは人の心が読める力。父の浮気もそれで知った。もっとも浮気がバレたのは母が雇った探偵のおかげだ。あたしは知らん顔をしてたのに、疑り深く嫉妬深い母がいくつもの探偵社を使い、父の浮気をつきとめた。まったく恐ろしいことだ。 だがそんなのは関係ない。 重要なのはもう一つの力。小さいころよく行方不明にあたしはなった。迷子だとか誘拐だとか、いろいろ世間を騒がせたこともあった。まあ小学校ごろから自分で制御できるようにはなったが、まあ慣れてくれば便利な力だと思うようになった。それはテレポート、つまり瞬間移動(テレポーテーション)できる力だ。いまでは二駅ぐらいの距離なら自由に瞬間移動できる。 だがそんなのは関係ない。 問題はこの場所だ。ここはどこなのだ?この古くて石造りの暗い部屋は。明かりはなく、照明がわりにろうそくがたくさん並んでいる。いやマジ気味悪い。なんであたしはこんなところにいきなりいるんだ?
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