光の先へ

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光の先へ

意識だけの状態で考え事をしていた。俺が働いていた会社はブラック企業と呼ばれるような職場で、残業手当や有休といった概念すらない労働環境だった。俺は願った。働けば働く程ちゃんと報われるように、と。 「その願い叶えましょう」 真っ白な世界で、純然たる白の世界で、美しい女性の声が、光がそう唱えると強い光を放った。眩しくて目を瞑る……光が弱くなった気がして目を開けてみると辺りは真っ暗になっていた。完全なる闇、何も見えない、なんだか闇の中を落ちているような気がしていて……意識が遠退いていく……薄れゆく意識の中、あっどうせなら年は15歳くらいで、健康的な体で、とか考えてたら意識がブラックアウトした。 ……なんだか微笑む女性の声を聞いた気がして目を覚ます。藁の上で寝ていた。どうやらここは飼育小屋のようだ。 立ち上がるとどこからか小さな光が現れて、自分の周りを飛んでいる。 「私は、主の命により、あなたの案内役を仰せつかった天使、名をアリエルと申します」 光が艶やかな女性の声で話しかけてきた。 「ああ……よろしく、アリエル」 「こちらこそ、これからあなたは光の一つ、ルクスと名乗って、ご自由に過ごして良いそうです」 「わかった……」 名前はルクスか、けど自由に過ごしていいって言われると何をすればいいか悩むよな……。 「ルクスの職業は村人です。ステータスオープンと唱えるとご自身の状態を確認できますよ」 「そうか、ステータスオープン」 ルクス HP10 MP10 職業 村人Lv1 装備 布の服、皮の靴 「声に出さなくても開けます。あとステータスを見れるのは転生者特典なので、人前ではやらない方がいいですよ」 「そうなのか、以後気をつけるよ」 早く言え、小屋の中で良かった。外でやってたら中二病こじらせたイタイ人だと思われるところじゃないか、扉が開いたぞ!爺さんが入ってきた。 「おお、気がついたようじゃのう。お前さん村の外で倒れていたんじゃが……何か話し声がしたようだか……」 「彼に私の姿も声も聞こえません」 そうなのか。 「ああー、起きて知らない所だったのであたふたしていました」 「そうかい、ここは辺境の開拓村、儂はここで村長をやっとるもんじゃか、そんな丁寧な言葉使いしなくてよいぞ、敬語は貴族様に話すくらいなもんじゃからな」 「そうか」 「村の出口はあっちじゃ」 外に出て、村長が指差す出口を確認すると門が見えた。 「わかった。世話になった村長」 背を向けた村長は片手を上げて答えると行ってしまった。 「村を出るかどうするか」 「ここは特に何もない村ですからね、次の町に行くことをオススメします」 「村を出るか」 門に向かって歩く、畑が広がっていて何軒かの家が並び、ここは教会やお店らしき家が一軒だけの小さな村だった。そして門に着くと門番らしき槍を持ったおっさんがいた。 「おお、気がついたようだな。村を出るならこのオーブに手を当ててくれ」 「なんだこれは?」 「これは犯罪者や職業を調べるオーブだ。犯罪者なら赤く光るやつだよ、さあ」 ブルーオーブに手を翳すと青く発光し、村人とでた。 「青か、通ってよ━━嫌駄目だ、村人のままではここは通せない、外は危険だからな。教会で転職したらまた来い」 「ルクス、村人から転職するには、最低でも村人レベルを5に上げる必要があって、それに教会で転職するには、寄付する必要があるのでお金も必要です」 「お金がかかるのか、今無一文だけどどうするか……」 「それなら、村長が村の畑に魔物がいて困ってるって言っててなー、駆除した魔物を店に売れば、小遣い稼ぎになるぜ」 アリエルにぼやいたつもりが、おっさんに話しかけたみたいになってしまった。今度こそ気を付けないとな。 「そうするよ」 村の畑で魔物を倒してお金を稼ぐか、俺は畑に向かった。
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