第三章「探し人」

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 それぐらい時間が経ったのだろうか。  シンシンと降りしきる雪が、しゃがみこんだ私のスキースーツにまで積もり出す。  何度振り払っても、気づけば積もっていく。  その内、どうせ積もってしまうんならと振り落とすことが面倒になり、諦め始めた。  最初のうちは指先や足先も冷えてしまうのを防ぐため、本能的にグーパーと動かしていたけれど。  目の前の景色が青白くかすんでくる。  その薄暗さが吹雪のせいなのか、夜になり始めたのか、それすらもわからないぐらい朦朧としてきた。  お腹すいたな。  膝を抱えてその上においていた手。  目の前でその手袋の上に薄っすらと積もった雪が、美味しそうに見えた。  冷たい雪を食べたら、もっと意識もシャキッとするのではないだろうか。  舐めてみようとして、寸前で思いとどまったのは。 『雪は食べてはいけません。遭難した人が、喉の渇きや空腹を満たすために雪を食べてしまうことが多いんだけど。それはね、どんどん体温を内側から奪っていく行為です! だから、絶対に食べちゃダメだよ!』  いいですね、と笑顔で釘を刺したイチコーチの言葉が聞こえた気がした。  大丈夫、きっと、サワコーチもイチコーチも私がいないことに気づいてくれる。  お姉ちゃんやお兄ちゃんたちも、気づいてくれるはず。  眠っちゃ、ダメ。  眠っちゃ!!  だって、ホラ、すぐそこに皆が……。  そんな幻覚に自分が一瞬眠っていたことに気づく。 「イチコーチ……」  せっかく滑れるようになったのになあ。  来年も練習して、もっともっと上手になって。  そうしたら、イチコーチと一緒に滑れるかもしれない。  上手になったら、褒めてもらえるかもしれない。  だけど、それはもう敵わないかもしれない。  そっと目をつぶって見たら、急激に眠気が襲ってきた。  眠気が寒さに勝った瞬間。  どこか遠くで私の名前を呼ぶ声を、夢の中で探し出す。
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