序章

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序章

 あなたの本当の名前は知らない。  年齢だって覚えていないし、どこに住んでいるのかもわからない。  十歳だったあの年、たった三日だけ一緒に過ごして。  温もりと勇気を分けてくれた人は、あれからずっと私のヒーローだ。  今、どこにいますか?  私のこと、覚えていますか?  私は、あなたの笑顔と温もり、そして。  励ましてくれたあの声を覚えてる。  もしかしたら、今年こそ。  そんな想いで十八歳になるまで毎年通ってみたけれど、二度とあなたに会えることなく、あれから十二年が経つ。  伝えきれなかった「ありがとう」を抱えたまま、私は今も雑踏の中で似たような人を捜してる。  時々、夢にまで現れて、ホワイトアウトに消えていく笑顔を。  いつかめぐり逢えたなら。  今の私にも、大丈夫だよ、と笑ってほしくて。 One~めぐり逢えたなら~
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