君だから

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いつの間にか、バレンタインの季節になっていた。 学校では勉強で使う物以外持ってきてはいけないルールになっているのだが、女子達は男子にチョコを各々で渡し合っていた。 もちろん、千南ちゃんも。 「はい。バレンタインチョコレート」 誰もいない廊下で千南ちゃんは俺に囁くように言ってきた。 俺の手に可愛らしい赤い箱が置かれる。 「家でゆっくり食べてね」 そう千南ちゃんは微笑むと、教室へと走っていった。 放課後、また桜は校門でまた身体を揺らしていた。 「どうせ、またチョコ1個も貰えなかったんでしょ? 私が義理チョコあげるからさ!」 そう言って、桜は袋に入ったチョコクッキーを俺に渡してきた。 そんな桜を鼻で笑った。 「俺は今回は1つ貰ってるんだよ、チョコ」 俺は心から湧き上がってくる誇らしげな気持ちで、千南ちゃんから貰った赤い箱を桜に見せびらかした。 「だが、このチョコは貰っていくぞ」 桜から貰った袋と一緒に、千南ちゃんからの赤い箱をカバンにしまった。 桜はその後、一言も発さなかった。
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