君だから

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君だから

「もう、(さく)はバカだなぁ」 いつも俺は桜に笑われる。 俺を馬鹿にする桜がずっと昔から嫌いだった。 幼馴染だからなのか、何故か桜は俺の側にピタッと寄る。 桜の香りがする香水をつけた桜から、爽やかな少しチェリーのような匂いが俺の鼻につく。 「もう可愛いなぁ、朔」 俺がセットした髪を乱暴に揺さぶる。 背が小さくて童顔なのを弄るかのように、短い少し茶色がかった髪をなびかせながらも俺の頭を振り回す。 「やめろよ。髪型崩れるだろ」 俺の朝はいつもこれで始まる。 朝、髪型をセットしても桜にほろほろと崩される。 幼馴染で隣の家に住んでいて、親同士も仲良しで、中学も一緒だとはいえ、一緒に登下校をしたがる桜は邪魔でしかなかった。 弟だと思っているのか、 『忘れ物はないか』だの、『宿題やりなさい』だの 何かとお節介を焼いてくるのだ。 はっきり言って、桜は凄く可愛いとも、細くてスタイルがいいとも言えなかった。 少しぽっちゃりしてて、2重ではあるものの団子鼻で、笑うと頬が盛り上がるのだ。 もうちょっと可愛げがあって、顔も整っていれば、幼馴染が美少女だと自慢できたのに。 「やめろよ、ブス」 俺は桜の手を力強く払う。 「言ったな!」 桜は頬を盛り上げながら、俺をくしゃくしゃにする。
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