0人が本棚に入れています
本棚に追加
君だから
「もう、朔はバカだなぁ」
いつも俺は桜に笑われる。
俺を馬鹿にする桜がずっと昔から嫌いだった。
幼馴染だからなのか、何故か桜は俺の側にピタッと寄る。
桜の香りがする香水をつけた桜から、爽やかな少しチェリーのような匂いが俺の鼻につく。
「もう可愛いなぁ、朔」
俺がセットした髪を乱暴に揺さぶる。
背が小さくて童顔なのを弄るかのように、短い少し茶色がかった髪をなびかせながらも俺の頭を振り回す。
「やめろよ。髪型崩れるだろ」
俺の朝はいつもこれで始まる。
朝、髪型をセットしても桜にほろほろと崩される。
幼馴染で隣の家に住んでいて、親同士も仲良しで、中学も一緒だとはいえ、一緒に登下校をしたがる桜は邪魔でしかなかった。
弟だと思っているのか、
『忘れ物はないか』だの、『宿題やりなさい』だの
何かとお節介を焼いてくるのだ。
はっきり言って、桜は凄く可愛いとも、細くてスタイルがいいとも言えなかった。
少しぽっちゃりしてて、2重ではあるものの団子鼻で、笑うと頬が盛り上がるのだ。
もうちょっと可愛げがあって、顔も整っていれば、幼馴染が美少女だと自慢できたのに。
「やめろよ、ブス」
俺は桜の手を力強く払う。
「言ったな!」
桜は頬を盛り上げながら、俺をくしゃくしゃにする。
最初のコメントを投稿しよう!