ママとしあわせの粉

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ママとしあわせの粉

ママとしあわせの粉 こんにちは。僕はマイロ。14歳でお空組になったジャックラッセルテリアだよ。 実はね、14年て長い時間を過ごしたお家は僕にとって、とっても幸せだったんだけど、ママには心配ばっかりかけてたなぁって、今でも思うんだ。 僕たちの世界では、神様が順番に札を渡して、 あそこの家だよ、君はここだよって空からの船に乗って降りて来るんだ。 僕は他の子達が次々と新しいお家に行くのをずっと横目で見てたんだけど、ついにその日がやってきた そしたら神様ったら、こう言うんだよ 「お前は、下に降りたら、体の弱い子として生きて来ること」 え!どういうこと? 神様は 「世の中には、いろんな子がいる。元気な子、元々弱い子、でも、それらが、きちんと割り当てられないと、辛い思いをしたり、飼い主さんたちを苦しい思いにしたりするじゃろう。そのために、我々の世界では、生まれ変わりの子たちを、選りすぐって、最適な場所に降ろすのじゃ」 つまり、僕は生まれてからの生活は普通に終わったけど、2度目の生まれ変わりには、体の弱い子として降りる。そうしてその家の人たちにたくさん病気のことを知ってもらう そういう役目らしい。 なんだかつまんないなぁ そう思ったけど、任務は任務だから。 渋々僕は船に乗った。 降りてみた生まれ変わりの世界は楽しかったよ。 ママは優しくて、お父さんは怖いけど、 毎日笑って過ごせたな。 でも肝心の任務があるので、約束通り、僕は重い病気にかかっちゃったんだ。 そんな僕のために一生懸命お世話をしてくれるママに、申し訳なくて仕方なかったよ ある日のこと、神様からの声で、 そろそろ引き上げの時だと言われた僕は 涙でくしゃくしゃのママに ごめんね、ありがとう、楽しかったよ の言葉を伝えきれないまま空に戻ったんだ。 空に戻ってから、神様に僕は言ったよ 「どうしてわざわざ、そんな悲しい思いをさせるようなことをするんですか?」ってね。 そしたら神様はこう答えたのさ 「だから、言っただろう。世の中には体の弱い」 もういい! わざわざ悲しませるための生活なんておかしいよ。僕はもっとたくさんママの笑顔が見たかったのに そう思って何日も泣いたんだ。 そんなことがあってしばらくしてからまた僕は神様に呼ばれた そこには同じようなジャックラッセルテリアが、船に乗る準備をしていたよ そしてまた、同じことを言ってるじゃないか 「お前は下に降りたら体の弱い子として生きるように」 まさか!また、ママのところに! ちょっと待ってよ 僕は神様に食い下がった ママはとても偉いんだ、どんなに大変でもご飯を作ってくれて、 いつも笑顔で、 だから だから もう泣かせたくないんだよ! そばでジャックも困ってる そんなことはお構いなしに、神様は彼を船に乗せてしまった ああ、また、ママが悲しんでしまう 下に降りたあの子が心配で僕は何度も覗きに行った。 僕の時のようにならないように明るい未来があるように ライト って名前をもらっていた かみさまのこんちくしょうめ! 僕は悔しくてちょっぴり涙が出た。 ライトはスクスク育って、やがてまた、重い病気にかかってしまった ママの悲しみは海よりも深くなっていた  なんでこんなことが続くんだろう。 これになんの意味があるんだろう 僕は考えても考えてもわからなかったよ ライトが上に上がって来る日に、 ママは同じようにくしゃくしゃの顔で、見送ってくれた。 ごめんねママ。 上がってきたライトに、ママはとても素敵な人だったろ?と聞くと 尻尾をクルクル振りながら あの笑顔はとっても素敵だよね。 と言ってたよ。 そうさ、ママは世界一なんだ。 すると、ライトはこう繋げた 「ぼくはね、思うのだけど、あの、ママだから僕たちは幸せに辛いこともなく、穏やかに過ごせたんじゃないのかな。 もちろん、この先に次々とそんな子ばかりが降りたらママは可哀想だけど、 きっと神様は、挫けない愛を与え続ける人を探してたんだと思うんだ」 挫けない愛? そう、挫けない愛だよ。 どんなことがあっても負けない。挫けない 愛し抜く そんな人を探すために僕たちは選ばれたのさ そしてこのさきに泣いた分だけ笑顔の多い日を送れるように幸せの粉を振りかけるためだよ 僕はライトの話を聞きながら 口をぽかんと開けていた そ、そうだったのかな  ゴホン 振り向くと神様が立っていてニコニコと話し始めた 「さすがライト、きちんと、お役目を果たしてきたな。 さて、マイロ、要するに今言った通りなのだよ 悲しいことがあって手を離す。 捨てる 嫌な顔をする こんな飼い主ばかりの世の中に 本物の愛を与えてくれる人を探しておったんじゃ。 そして見事に君たちのママはそれを成し遂げた。 そして?その先にあるものはなんだったかな」 しあわせの粉! そう、しあわせの粉を振りかけてもらえるんだ。 そうするとこの先にどんなことがあってもママは笑顔で過ごせることになるんだ そうだったのか。 よかった。ぼくのせいで、ライトのせいで、泣いてばかりの毎日にならなくてよかった。 ぼくたちは、お役目が終わっても大好きなママの笑顔が見れることに嬉しくて駆け回った。 ❌❌❌❌ あら、こんなところにライトの毛が。 あら? なんだかキラキラの粉。 そういえば大変な子を見た後にしあわせの粉がもらえるとかって、話があるみたいだけど、 まさかね。 せっかく掃除して片付けてたのに何かしら? マイロもライトもいなくなっちゃったけど とてもしあわせだったな。 きっとこの先もずっとずっと一緒だよ しあわせの粉なんて 私はそんなものなくたって、しあわせだよ。 君たちに会えて本当によかった。それが私のしあわせの粉、いいえ、しあわせのかたまりね。 ふふふ。 ママは僕たちの写真にとびきりの笑顔を見せて話していた。 完 龍翔琉作。
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