1 貴女のことが好きです

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「あ、こんな所にいた」  その日の昼休みの屋上。蘭の声で私はふと目を開けた。朝が早かったせいか、いつの間にかうつらうつらとしていたようだった。 「お昼食べてないの?」  蘭は私が手にしているクリームパンを見て聞いてきた。なんだか今日は食べる気にならない。 「なんか食べる気にならなくてね」 「まぁ、今日は部活ないんでしょ? 無理することはないと思うけど」  蘭は私と少し距離を空けて座った。ちらっとそちらを見やると、蘭は空を仰いでいた。  それに対して私は手元のクリームパンをじっと見つめていた。 「で? 食欲がない原因は春山?」  蘭が空を見上げたまま尋ねる。 「うん、まぁ……」  蘭は私の方を少し見ると、再び口を開いた。 「じゃあ、きぃも春山がきぃのラケットを盗んだって思ってるんだ」 「……」  蘭の直接的な言葉に私は何も答えられなかった。 「蘭は春山じゃないって思うの?」  私は蘭の質問に答えられない代わりに聞いた私の問いに、蘭は「そうだね」と即答した。 「なんでそう思うの?」  蘭は「んー」と少し考える素振りを見せつつ、 「勘」  とだけ答えた。 「勘って……」  私は何となく反論する気もなかった。 「だって、部活に応援まで来てた春山がわざわざラケット盗むようなことする? それに盗んだとしても自分の教室に置きっぱなしにするかな」 「……」  蘭の言葉に、私は何の反論も出来なかった。 「で、そこで出てくる問題が、誰が何の為にきぃのラケットを春山の教室まで持って行ったのか」  確かに、私を困らせるだけが目的ならわざわざ春山のクラスまで持って行く必要なんてないはずだ。 「私のラケットを春山のクラスに運んでメリットがある人物……」 「ま、そういうことだね」  蘭は立ち上がってスカートをパンパンとはたき、立ち上がった。 「で、犯人は誰なの?」 「さぁ?」 「さぁって……」  私はそこでため息を吐いた。てっきり誰か分かってると思ったのに。 「とりあえず、真犯人を見つけ出すには聞き込みするしかないわね」  蘭はそう言って、私の方を見てニヤリと笑った。
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