1 貴女のことが好きです

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「夢野さんのラケット? 無くなったの?」  放課後。帰り支度をしていたクラスメイトに聞き込みと称して、とりあえず手当たり次第にあの日のことを尋ねていた。 「いや、もう見つかったんだけどさ。何故か四組で見つかったのよ」  すっかり探偵気分の蘭が、女子生徒に何故か得意げにそう告げた。 「えー、本当? じゃあ四組の誰かが盗んだってこと?」 「それが分からないんだよ。それで何か見てないか聞いて回ってるの」 「んー、そうねぇ……」  聞かれた女子生徒はしばらく考えこんだ。数秒間考えこんだ後、口を開いた。 「ごめん、何も聞いてないし、見てもないや」  申し訳なさそうにそう口にしたクラスメイトに「いや、気にしないで」と一声かけて、次に聞く人を探しに行く。だけど、一人聞いている間に皆どんどん帰って行く。  既に残っているのは数人のみだ。早くしないとその人達も帰ってしまう。 「ねぇ、この間さ……」 「ちょっと聞きたいんだけど……」  二手に分かれてその数人のクラスメイトに尋ねていく。その結果。 「……何も分からなかったね」 「うん……」  結局、教室にいたクラスメイト全員にあの日のことを聞いたが誰も何も見てないし、聞いてもいなかったようだった。 「また明日みんなに聞いてみる?」 「そうだね」  そんな会話をしていると、少し控えめに入口の扉が開いた。  二人して同時にそちらを振り返ると、入口から顔を出した一人の女子生徒はビクッと身体を震わせた。 「あ……あの……」  顔を出した女子生徒はおどおどと口を開いた。  「江崎(えさき)さん?」  蘭が女子生徒の名前を口にすると、女子生徒……江崎さんはキョロキョロと教室内を見渡し、誰もいないことを確認して中に入った。 「どうしたの?」   そういえば、江崎さんにはまだ聞けてないな、と思いながらも私は彼女に聞いた。なんだか、江崎さんが言いたげな顔をしていたからだった。 「あの……私、夢野さんに話さないといけないことがあるの……」  江崎さんはそこまで言うと、ずっと逸らしてた目を私の方へ向けた。  そして、ゆっくりと口を開いた。
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