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「あ、夢野さん!おはようございます!」
「……なんであんたがいるのよ」
翌日の朝。普段通りに登校すると、正門前には一昨日告白してきた男子生徒が立っていた。
「夢野さんに会いたくて」
男子生徒はそう言うと柔らかく笑った。その瞳は子どものように純粋な輝きに満ちていた。
「一昨日ので分かっただろ、私はあんたが思ってるような可愛らしい女子じゃないの!」
振り払うように歩き出す私の後ろを慌てて男子生徒はついてきた。
「いや、夢野さんは俺が思っていた通りの素敵な人です!」
「……は?」
私は耳を疑ってつい、立ち止まってしまった。そいつの言っていることの意味が分からなかった。そいつは先程と変わらない瞳で私を見ていた。
「それってどういう……」
「きらら、おはよう!」
私が聞く前に知佳が後ろから腕を絡ませて来た。顔は笑っているが、何となく目は笑っていないように見える。
「早く行かないと遅れるよ」
まるで男子生徒のことなんて見えてないように私の背中を押して急かす。
「あ、夢野さん、待って!」
私は男子生徒の声を背中に受け、後ろが気になりながらも知佳に促されるまま校舎に向かった。
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