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薔薇の約束
*
「これでいいですか?」
書面に署名された筆跡を眺める。招待状の筆致と瓜二つだ。
「十分な出来だわ」
にい、と口の端が上がる。あの娘が彼の隣に居られるのも、あとわずか。
「大丈夫よ、彼はわたくしが慰めて差し上げるから」
ねっとりと零した言葉は夜の闇に飲まれた。
*
玄関から呼び声がして、対応に出ると、そこには森内が居た。
「まあ、森内さま。今日はどのようなご用件でしたでしょうか?」
健斗は仕事のあと、用事も済ませてくると言って家を外しており、もしかして仕事の話だったらどうしようかと思っていると、実は楓に頼みたいことがある、と言う。
「どのような事でしょうか。私でお役に立てるのでしたら良いのですが……」
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