2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺、田内虎次郎は双子の兄龍太郎によって、崖から突き落とされた。
「事情は後でわかる、とりあえず死んでくれ」
背中を押されながら聞いた最後の龍太郎の言葉だ。
絶望的な高さのダイビング、迫りくる海面、どう考えても死ぬ。
つまり俺に、事情を知るべき後は無い。
どこか遠くから聞こえてくるような、他人事の様な俺の絶叫を聞き、意識がブラックアウトした。
そこは、中世の文明レベルの世界に、魔法が加わったパラレルワールド、いわゆる異世界と言うやつか。
気が付いた時、俺はその世界で完全に現世の記憶を持って転生していた。
賢者ターウチ、それがここでの俺の名だ。
元々の頭脳はそれなりに人並み以上だと思っていたが、現世の知恵を持った俺は賢者として尊敬されていた。
魔法はからっきしだったが。
何だかよくわからん状況で双子の兄に殺された俺だが、あのまま現世でパッとしない人生を送るより、チートな現世の知恵を使ってチヤホヤされて生きるのも悪くない。
この賢者、弟子という名目で綺麗な女性たちを侍らせているようだ。
「ま、結果オーライで龍太郎に感謝だな」
そんなある日、賢者ターウチの屋敷に王さまの使いがやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!