タマゴとニワトリ

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 61f3e47b-1dc1-44d9-a410-b03ac560f227  俺、田内虎次郎は双子の兄龍太郎によって、崖から突き落とされた。  「事情は後でわかる、とりあえず死んでくれ」  背中を押されながら聞いた最後の龍太郎の言葉だ。  絶望的な高さのダイビング、迫りくる海面、どう考えても死ぬ。  つまり俺に、事情を知るべき後は無い。  どこか遠くから聞こえてくるような、他人事の様な俺の絶叫を聞き、意識がブラックアウトした。  そこは、中世の文明レベルの世界に、魔法が加わったパラレルワールド、いわゆる異世界と言うやつか。  気が付いた時、俺はその世界で完全に現世の記憶を持って転生していた。  賢者ターウチ、それがここでの俺の名だ。  元々の頭脳はそれなりに人並み以上だと思っていたが、現世の知恵を持った俺は賢者として尊敬されていた。  魔法はからっきしだったが。  何だかよくわからん状況で双子の兄に殺された俺だが、あのまま現世でパッとしない人生を送るより、チートな現世の知恵を使ってチヤホヤされて生きるのも悪くない。  この賢者、弟子という名目で綺麗な女性たちを侍らせているようだ。  「ま、結果オーライで龍太郎に感謝だな」  そんなある日、賢者ターウチの屋敷に王さまの使いがやって来た。
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