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血塗れの手と石、そこにこびりついた頭皮を見て堪えきれず嘔吐する。
必死に左手で右手の指を石から引きはがし、海に石を捨てた。
殺したんじゃない!異世界に送ったんだ!こうしなければあいつに未来は無く、今の俺の存在も消えてしまうんだ!
そこまでやり終えて、俺は恐ろしい可能性に思い当る。
「この転生の記憶は、本物なのか?」
俺は俺、まごうこと無き双子の兄の龍太郎で、俺の頭がおかしくなって異世界に転生したと思い込んで弟を殺したんじゃないのか?
異世界に転生した証拠なんて、何かあるのか?!
今度こそ俺の頭の混乱は、メーターを振り切ってしまった。
喉を灼く痛みを伴って、信じられないような絶叫を放つ。
モウダメダ、タエラレナイ…!
俺は弟を追うように、海に入っていった。
もう、死ぬか異世界に転生するしか、俺の魂に救いは無いと思った。
潮の流れに呑まれるように沈んでいった龍太郎が、その後どうなったのかは、誰も知らない。
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