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またしても俺は、あの世界の学者として生活していて現世の記憶を取り戻した。
賢者としての俺が処刑された時点より、過去に遡っているようだ。
「ウィン先生、どうしたんですか?ずい分ボーっとしていましたけど」
俺の助手であり妻である女性が声をかけてくる。
そう、今の俺の名は、ダ・ウィン、生物の研究者だ。
子どもの頃から生物の研究に並々ならぬ関心をもっていたようだが、今ならそれが何故なのかわかる。
この時代の世の中に、進化論を理解する地ならしをしておきたかったのだ。
やがて来る自分自身の為に。
現世の記憶を取り戻した俺にとって、もう研究は意味をなさなかった。
俺は突然天の啓示を受けたかのように、知っている知識で進化論を書物にまとめた。
その斬新な理論は人々に衝撃を与え、瞬く間にこの時代のベストセラーになった。
本がバカ売れして金持ちになり、すっかり浮かれて酒池肉林の大豪遊をしていたある日、我が家に役人がやってきた。
どうせまた税金をせびりに来たのだろう。
ついこの間勝手に増額されて払ったばかりだというのに、揉めるのも面倒だから、また言われた額を払って追い返そう。
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