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週末朝早くから、俺の運転で二人で出かける。
何も知らない弟は…弟であった頃の俺は、楽しそうにしている。
何だかんだで一番気の合う双子の兄弟だから、一緒に出掛けるのが楽しくて、俺はいつも龍太郎の後をついて回っていた。
龍太郎の俺も、そんな弟を可愛がっていた。
双子なんだから、兄って言ったってちょっとの時間の差なのに。
そんな兄弟愛も、楽しかった思い出も、こんな形で最高にくだらない茶番だったとわかる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
全く、笑えるよな、どっちも俺なんだ!
海岸沿いの駐車場に車を止め、崖の方へ歩いていく。
「今日はこの海の生態系を考えるうえで無視できない、海の生き物を捕食する鳥について調べてみたくてな、専門の虎次郎の力を借りたいんだ」
「へえー、龍太郎が俺を頼るなんて珍しいな」
そう言う弟はまんざらでもなさそうだった。
「あそこだよ。崖っぷちに巣がある、足元に気を付けろよ」
慎重に身を乗り出して下を覗き込む虎次郎の背中を、俺は押した。
「事情は後でわかる、とりあえず死んでくれ」
それしか言えなかった。
恨めしそうにこっちを見ながら、弟が落ちていく。
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