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「ホント……あのLINE、嬉しかった」
だから、素直に言葉にした。それだけで、壊れそうなくらいに心臓が早かったことも、涙が出そうなくらい心のある場所が痛かったことも思い出せる。
けれど、言ってしまってから、なんだか恥ずかしくて、顔が熱くなった。鈴の顔が見られない。
「ホント……そゆとこ……」
ため息のような吐息混じりに鈴が呟く。
何かまた、間違ってしまったかな。と、不安になって、ちら、と鈴を見ると、顔を赤くして額に手を当てていた。
「鈴君? あれ? ……ごめん。今、言ったらだめだった?」
もしかしたら、鈴は風祭さんにこんな話を聞かれたくなかったかもしれない。
でも、LINEの内容までは言ってないし(一応気を使ってみた)スルーされたの嫌だったみたいだから、今回は素直に言ってみたんだけど、だめだったんだろうか。
「いえ……」
鈴はあからさまに俺から目をそらして、そっぽを向いている。やっぱり顔が赤いのは、気の所為じゃない。
「その辺で勘弁してあげて? 鈴の心臓壊れる」
風祭さんは、必死で笑いを堪えているみたいな顔をしていた。鈴は相変わらず困り顔だけど、風祭さんの言葉を否定しなかった。
「鈴は池井君が無自覚で、可愛い顔するから、困ってるんだよ?」
小さな子供に諭すように、彼は続けた。
かわいい?
俺は言われている意味が分からなくて、思わず首を傾げる。その形容詞は、風祭さんならともかく、普通二十代後半の平均的成人男性にはあまり相応しくない。いや、年上の女性からならありえなくもないけど、今のどこらへんにそんな要素があったんだろう。
「池井君。それも」
にっこり笑って風祭さんは首を傾げたままの俺を指さした。今日は風祭さんに考えていることを全部見透かされている気がする。
「まあ、いいよ。そのことは、おいおい鈴にじっくりたっぷりゆっくり教えてもらって?
もうすぐ、映画の時間でしよ? その前に、これの話だけしておくよ?」
なんだか、色々な意味で不穏当な言葉で締め括って、風祭さんは話を戻した。俺の方も気になることは色々あるけれど、それは鈴にじっくりたっぷりゆっくり?教えてもらうとして、風祭さんの言葉に従う。
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