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すっきりと凛々しい顔がこちらを凝視している。こうして見ると長門はなかなか格好良い少年であった。涼しげな目元がなんとも女性好きしそうだし、首や手足のすらりと長い均整のとれた体型が目を引く。
これが今からの三年間でゴリゴリの筋骨隆々になるかもしれないのか──と思うと、キラキラ輝く素敵な何かをドブにぶち込むようで酷く残念なことのように思われた。
「いやあ、でもよかった。学校までの連れができて。実は一人で汽車に乗るのが初めてで……乗り過ごしたらどうしようとか、切符これでいいのだっけとか色々考えてしまって」
「初めて!?」
長門は腕組みをしたまま、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「……はあ、本当にすげえ坊ちゃんなんだな。さすが華族様」
「はは。恥ずかしい、世間知らずで」
私が八重歯を見せて笑うと長門は不安げに手を出した。
「切符、見してみな。念のため」
「あ、はい」
整った男前の顔が私を小馬鹿にしている。ふつふつと込み上げる笑いに耐えながら、長門が声を震わせた。
「──お前、終点まで買ったの?」
「ああ。よく分からんからもう良いや! となって」
「もう良くはねえよ。次から人に訊け」
ゲラゲラ笑う顔をみつめ、次から長門に訊こうと思った。無愛想かと思いきやなかなか面倒見が良さそうだ。非常にありがたい! 私はニコニコと長門に頷いた。
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