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「──何と言いますかその、男ばかり集まって三年離れ小島に居りますからあまりに品がなくて。それに何かにつけて暴力的でしたし、全てをお話しするのは非常に憚られます」
「まあ」
小夜さんは口元に手を当てて笑った。
「──ですので、お望みならば書面で提出させて頂きます。停泊先から手紙を出して……ちょっとした連載小説みたいになりそうですが。なんて」
「いいですね、面白そう」
「えっ?」
軽い冗談のつもりが返って彼女の興味を煽ってしまったようだ。
かくして私は鬼の如く黒く、恋の如く甘くはなく、地獄の如く熱き海軍兵学校時代の日々をこの淑やかなる烏丸小夜嬢へ発表することとなったのであった。
……最後に誠実と正直をモットーに掲げる海軍精神のもと、読者諸賢に正々堂々打ち明けておきたいことがある。
冒頭からさも結婚を前提に真剣交際しているかのようにランデヴーしているこのご令嬢と私は、未だお付き合いにすら至ってはいない。
以下本編、標題は彼女の命名に従い『江田島わんわん物語』とする。草々不一。
──大日本帝国海軍 第一艦隊所属少尉
霧島 誠
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