第3章:身体頑健

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「大鷹は山口だったっけ。この中じゃ一番帰省が楽そうだな。距離的に!」 「……確かに」  いいなーと口々に呟きながら皆で部屋に向かってぼちぼち歩き出した。次は座学なので着替えねばならずあまりゆっくりもしていられない。 「いいな。東京遠いんだよな。もうほぼ丸一日掛かった。俺と霧島は一駅違いだからずっと一緒なんだけど、ツレいなかったら厳しいよ」  長門は私の方をむいて小さく笑った。私は大きく頷いた。 「確かに一人だと厳しかったなあ。切符の買い方も分からなければ何番線に行けば良いかも当てずっぽう、おまけに呉軍港から船だなんて全く分かってなかった!」 「それでよく辿り着けたなあ……頼むから夏季休暇の行き帰りぜったい弓親と一緒にいて。まじで心配だから!」 「無論そのつもりだ!」  千鳥は背伸びぎみに私の両肩を押さえ懇々(こんこん)と言い聞かせた。大鷹も同様に長門の肩を押さえ無言で訴えかけた。 「千鳥は途中まで大鷹と帰れよ。方向一緒だろ?」  長門の問いに、おーと声を上げる千鳥。 「そうじゃん! 一、二時間だけど藤次郎が一緒の方が退屈しないや」 「大鷹ほとんど喋らないけど……まあいいか。千鳥が楽しいなら」  私はニコニコと二人を眺めた。長門は何やら思い出した様子で千鳥に向き直った。 「──でも気を付けろよ。天城先輩、九州だぞ」 「嘘だろ!?」  千鳥は長門の襟首を掴んだ。 「え、どこ!? まさか鹿児島じゃないよな! 鹿児島ならあんな曲者知らない訳ないし!! あーマブか。つら。はああ」 「どこっつったかな……? 出身と帰りの時間きいてみるよ。何か上手いこと言ってさ」 「頼むぞ弓親! お前だけが頼りだからなっ!」  長門はフッと笑い答えた。 「その代わり羊羹、饅頭、豆菓子。みっつ揃えて持って来な。そしたら必ずきき出してやる」 「てめえ、友達ゆする気か!」  千鳥は長門に食ってかかった。 「甘えんな。俺だって危険が及ぶんだ。タダって訳にゃいかねえよ」 「くっそー! 絶対だからな! もし間違ってたら倍にして返せよ!!」 「任しとけ」  長門は千鳥に握手の左手を出し、千鳥はそれをブンブンと振った。
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