第3章:身体頑健

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3-5『夜のおやつ』 「そういえば榛名先輩と扶桑先輩、どこの出身なんだろう?」  夕食後、大鷹とぶらぶら酒保に向かいながらふと考えた。 「……知らないな。意外と」 「榛名先輩、毎日挨拶してくれるのにあんまりゆっくりは話せてないんだよなあ。扶桑先輩のことは知らないというか理解できないけど……どうせなら先輩方とも仲良くしたい。大鷹だって春日先輩のこと知りたいだろ?」 「…………うん」  ──だいぶ溜めたなあ。実のところ大鷹の二号対番、春日先輩のことをよく知らない。一号先輩についてはいるのかも分からない。大鷹が話さないからだ。自分や長門のように有名な先輩についている訳でもなく、千鳥のように愚痴をこぼすでもない。  私は大鷹の底知れぬ忍耐強さ、温厚さに非常に興味を持ち始めていた。  普通学講堂の裏手に『養浩館(ようこうかん)』という白く瀟洒な和洋折衷の建物がある。一階に酒保こと売店、二階に娯楽室や日本間の広間がある。酒保では学用品や下着等の生活雑貨、うどんや菓子類を買うことができた。  精算は不要な争いを避けるべく現金ではなくいわゆるツケ払いで、備え付けの伝票に品名・数量・金額と分隊・氏名を記載する。月末本人あてに請求する。その集計は酒保係が担当する。  そう、扶桑先輩(係)と榛名先輩(係補佐)と私(係付)のことである──。  ──あれ学生なのにお金は? とお思いになられましたか。鋭い! 実は私たち生徒は海軍の下士官(上等兵曹・一等兵曹・二等兵曹)待遇で給料が貰えるのです。  学生の身分で俗に水兵さんと呼ばれる兵卒よりもお金をもらえるのは少し気が引けますが、当時はあまり気にかけてはおりませんでした。  ちなみに従兄弟の(すばる)が陸軍士官学校におりますが、こちらも同じ仕組みです。ご参考までにです。
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