第3章:身体頑健

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「えっと、羊羹羊羹……あった! あとまんじゅう。大鷹は?」 「……うどん」 「今日も? うどん好きだなあ」 「……夕食、足りなくて」 「分かる分かる。自分は横でお汁粉食べるからそこに座ろう」  兵学校の食事は正直あまり美味しくないことが多かった。テーブルマナーの一環で味噌汁をスプーンで音を立てず食べるだとか、視覚的な要素もあった気がする。  ただ食事について言えば卒業後士官候補生になってからが質も量も地獄だったので、少尉になった今は毎日フルコースで疲れはありますがまあ美味しく頂いております。 「あっ、榛名先輩がいらっしゃる。伝票の回収かな。行ってみよう」  私と大鷹は商品を受け取り、入口側の席に置いて先輩に挨拶の敬礼をした。 「やあ霧島君、大鷹君。夜のおやつ?」  先輩は伝票片手に微笑んだ。 「はい! ちょっと食べ足りなくて……係の仕事ですか」 「うん。伝票をね」 「自分は何かしなくて宜しかったのでしょうか。まだあまり仕事内容が分からなくて……お教え頂ければ何でも致します」 「ありがとう。今日は大丈夫、また今度お願いするね」 「はい! いつでもお申し付けください!」  先輩はやわらかい笑顔で応えた。 「大鷹くんのうどん美味しそうだね。僕も食べていこうかな」 「…………」  大鷹は何と答えたら良いか分からず、とりあえず会釈した。 「ごめん、のびちゃうから早くお食べ」 「……すみません。お先、いただきます」  大鷹は席に着き熱いうどんを啜った。何とまあ男らしい啜りっぷりか。食堂なら叱られる食べ方、鰹出汁に葱の香りがほわんとした。
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