第4章:武道週間

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「霧島ぁっ!」 (──()たれる!)  反射的にぎゅっと目を閉じた瞬間、天城先輩はあろうことか私を力の限り抱きしめた。 「──許す、泣けい!」 「う、うわああああああ──ん!!!! メイちゃああああああん!!!!! さよならあああああああああ!!!!!」 「馬鹿者! 鼓膜が死ぬ!!!!」  天城先輩は泣きじゃくる私を思いっきり突き飛ばし唾が飛ぶほど怒鳴りつけた。床に臥し号泣する私の背中にガツガツ蹴りを入れながら天城先輩もなぜだか涙目になっていた。頭の中は滅茶苦茶、背中はボコボコ、ハートはギタギタになったが、一瞬垣間見た天城先輩の仏心にああ一号も人間なのだなと思った。 「天城先輩! 自分はもう絶対絶対恋など致しませんッ! 海軍に魂の全てを捧げ、一生独り身の独身華族として生きてゆきます──ッ!!!!」  それを聞いた長門は息も絶え絶え腹の底から笑いまくり床を拳で叩いた。 「ぎゃははははははは! 独身華族って!! 大体おま、おまえっ、誰にっ、何誓ってんだよ馬っ鹿くせえぇ──あーっははははははは!!!!」 「長門お!! 貴様それでも人間かああああ!!!!」  息もできぬほど転げまわって爆笑する長門目掛け、私は泣きじゃくりながら飛び掛かった。 「き、霧島待て! ステイ! ステイッ!!」  千鳥は私を羽交い絞めにし、大鷹は千鳥の腰を掴んで引っ張った。私以外一人残らず笑っていた。今でも許せません。  かくして私の淡く幼い初恋は江田島の海上で特大花火のごとく爆発四散し、海の藻屑となり果てました。それは二十三年というまだ短き人生の中ではぶっちぎり一番に情けない出来事なのでありました。  小夜さん。私はいま、無性に貴女に会いたいです……
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