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学校終わり
学校が無事終わり、今度こそトオルはトオルの家に行こうと思った。
教科書を片付ける。その様子をシュウたち3人が眺めている。
「ユウヤ、終わったか?」
「うん」
「じゃ、行くか」
アリユキが当たり前のようにトオルの腕を引っ張る。それなりに力の強いアリユキの前にはどうすることも出来ない。だが、どうしてもトオルは自分の家に行き、自分がどうなっているか知りたかった。
朝に放課後は大丈夫と言った手前申し訳ないが、今のトオルにはそちらの方が大切だ。
「ちょ、ちょっと、まって!」
「はあ?」
トオルの言葉にアリユキも、シュウもリクもアリユキと同じように不快げな顔をする。
朝の時、携帯を弄られた不穏な空気がトオルたちの中に漂う。くじけそうになるのを抑え、トオルは声を出す。
「や、やることがあって……」
「なんの?」
「えっと……、いろいろ」
まさか自分がユウヤではなくトオルで、トオルは不慮の事故で死んだから家の様子を見に行きたい、などと言ったらこの3人は信じるだろうか。
無理だ。そんな荒唐無稽な話、信じるわけがない。
それでもどうにかして理由をつけて離れなければ、家に行くタイミングが失ってしまう。
トオルは必死に考えるが、すぐにうまい理由が見つからず言葉に詰まる。
「ユウヤ」
シュウが冷たく名を呼んだ。
自分はユウヤではないはずなのに、その威圧感に背筋がぞわりとする。
固まるトオルを見て、シュウが動く。
アリユキに握られていない方の腕をつかみ、有無を言わさない強い力で強く引っ張る。
「おっと」
想定していない強い力で引っ張られたトオルの体は倒れこみそうになったのをアリユキが制服の襟足を掴んで止めた。
「ぐっ……」
突然首が締まり、トオルの顔が苦痛に歪む。
それを見ても、3人は気にする様子もない。リクに至ってはトオルとのやり取りを見て呆れたような目つきをするだけだ。
「早くこい」
シュウが冷たく言い放つ。
その目はトオルに拒否権がないことを明確に示していた。
トオルは涙目になりながら、うなずいた。
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