連れてこられた家

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連れてこられた家

 3人に引っ張られるように連れてこられたのは閑静な住宅地にある一軒家だった。周囲の住宅よりも一回り大きい家にトオルは思わず声を漏らす。  学校近くのバスに乗って15分ほどにあるここは昔から豪邸が建ち並ぶエリアだ。  その家の前で立ちすくむトオルをよそに他の3人は我が物顔で入っていく。 「おい、来いよ」    トオルも促され、急いで家に入る。  中を見渡すと清潔に保たれた玄関から続く廊下や広いリビングがあり、見た目以上に広く大きい家だということがわかる。  仮に一人一部屋だとしても、一体何人の人間が暮らすことが出来るのだろうか。  だが、今のところ家にはトオルたち4人しかおらず、それ以外の人の気配はない。  恐る恐るリビングに行くと、トオル以外の3人は各々ソファでくつろいだり、冷蔵庫から飲み物を飲むなど好き勝手しているが、トオルだけは落ち着きなく立ちすくんでいる。  ここはなんなのだろう。この3人のうちの誰かの家なのだろうか。  だったら、とトオルはシュウの方をこっそりとみる。  シュウは確か、この地域に代々続く老舗企業の跡取り息子だ。  この地域に住む人間だったら知らぬ者はいないほど有名で、トオルですらも知っている。  ならば土地も家も複数持っているだろう。ここはそのうちの普段は使ってない家、ということなのだろうか?  それを、シュウたちはたまり場にしている、ということなのだろう。  なんと贅沢な話だと思いながらも、それならばなぜシュウは貧乏暮らしをしているユウヤと友人なのか。そして朝から続く違和感は一体何なのか、わからないことがさらに続く。  そう考えながらぼんやりしていると、制服を脱ぎラフな格好になっているアリユキが声をかける。   「ユウヤ、制服、ジャケットぐらい脱げよ」 「あ、うん……」  いわれた通り、ジャケットを脱ぐ。  持っていたカバンと一緒に部屋の隅に置いたのをアリユキはじっと見ている。  それを不気味に思う前にアリユキは振り向いたトオルに向かってにやりと笑った後――、殴った。 「……ッ!」  想定していなかった衝撃。受け身すら取れず床に転がった。  何が起こったのか理解できないまま、呆然と殴られた頬を触る。  ジンジンとした痛みを感じながらアリユキを見上げると、いつの間にかそこにはシュウとリクもいた。  3人はトオルを見下ろす。なぜか、表情が見えない。 「な、なに……」 「シュウ、何回?」 「15」  冷たく言い放ったシュウの言葉にアリユキは笑いながらトオルの腹にめがけて足を振り下ろした。
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