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 午後の授業を終わらせる。  部活動などの生徒は早々いなくなる。トオルはこれから行われる行為に覚悟を決める。  シュウ達が下校の準備を終え、トオルの方に向かってくるのをトオルは身を固くして待った。 ユウヤの姿はない。授業が終わり、そうそうに教室から出ていってしまった。 だから、トオルは今独りだ。 「ユウヤ、帰ろうぜ」  アリユキの言葉に、トオルは頷く。  トオルは鞄を手に取り、席から立ち上がる。 「き、桐島、君」 「……えっ?」  振り向いた先にいたのは、ユウヤだった。  既に帰ったのではないのか。忘れ物かと隣の机を見るが、机には何も置かれていない。  トオル含め、シュウ達3人がユウヤを見る。たとえ今のユウヤがトオルでもユウヤにとってその視線は良いものでは無いはずだ。 「瀬名君、どうしたの?」 「えっと……、そ、その、ノート、を」 「ノート?」  ユウヤは強ばった顔で頷く。 「俺、ずっと休んでいたからノートとか全然取れてなくて......、だから、できれば見せて欲しいなって」  ユウヤがどんな意図でシュウ達3人がいる前でそんなことを言い出したのか分からず、戸惑う。  それに、ノートなんてここ最近は満足に取れていない。 「え、っと......」 「できれば今日、貸して欲しくて。来月、テストだから遅れた分、早く取り戻さなくちゃ」 「……わかった」  言われた通り、トオルは鞄からノートを取り出し、ユウヤに渡した。  満足に取れていないことについては後で謝罪しなければならないが、現状これで何とかなるだろう。 「これ......、貸すから」 「その、良ければこれから、時間、ある?」 「えっ?」   ユウヤの誘いの言葉に、トオルは思わず目を丸くする。 「俺、親が迎えに来るんだけど、仕事で遅くなるっていうからさ。それに、ノートみて分からないところは、聞きたいし」 「分からなければ、誰かに聞けばいい」  後ろで、ユウヤに聞こえる音量でリクが呟く。  ユウヤの体が、小さく跳ねた。一瞬顔が歪むが、すぐに引き締まった顔に戻ったのを見て、ようやくユウヤがトオルのシュウ達3人と関わる時間を減らそうとしていることに気がついた。  トオルはちらりとシュウ達を見る。  シュウとリクは不満げに、アリユキは面白いことがおこったと笑っている。  だが、3人とも今は他人だと認識しているユウヤに何か強く言う気配がない。  今のトオルの決断を試しているのだ。 「じゃあ、図書室、行こうか。俺、図書室行くけど、皆、どうする?」 「……じゃあ、俺らも行く」  3人を代表して、アリユキが言う。  シュウもリクも不服ながらそれに従う。  トオルはちらりとユウヤを見た。顔は相変わらず引き締まったままだった。
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