夏休み R18

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夏休み R18

 トオルとユウヤが思いを通じて1週間後、夏休みが始まった。  シュウ達3人の行為は夏休みを境にパタリと止み、トオル達は不気味がったものの、ひとまずはせっかくの夏休みを楽しむべくできる範囲の様々な予定をたてていた。  トオルは久しぶりの自宅に行く道中、ユウヤにメールを送る。 『そろそろつくけど、大丈夫?』  折りたたみ携帯の扱いにもすっかり慣れた。最初はちまちまボタンを連打するなんて面倒だ、と思っていたが、人間慣れるとなんの苦なくできてしまう。  歩きながら何度も携帯の問い合わせ機能を使いユウヤからの返信が無いか確認する。 「……やっぱり来ないか」  ユウヤとは昨日から連絡が取れてない。  今日、トオルとユウヤはトオルの家で映画を見る約束をしていた。  トオルの持っている映画のDVDの中で何を見るか、その話し合いをしている最中でユウヤの連絡は途切れてしまい、心配になったトオルは約束の時間よりも早く行くことにしたのだ。  メールにも、電話にも出ないということは今までありえなかった。 「……」  不安な気持ちになりながら、トオルの足は早まる。  最初は歩いていた足が次第に早足に代わる。それが小走りに変わる頃には全力疾走になっていた。  蝉の音が不安を煽る。無駄に暑いこの気温のせいで無駄に鼓動がバクバクと鳴る。 「ハァ……ハァ……ハァ」  ユウヤの身になにかあったのではという悪い考えが頭をよぎった。  トオルは全力で走り、家に向かう。慣れ親しんだ我が家が見えてきて、それを懐かしむ間もないままに玄関までたどり着く。  チャイムを鳴らすことを忘れ、トオルは家のドアを勢いよく開けた。 「ユウヤ!?」  事前にユウヤからトオルの親は仕事で今日は居ないということは知っている。  だから、ここにはユウヤしかいないはず。  だが、トオルがどんなに叫んでもユウヤが現れる気配はない。  それに、なぜ家の鍵がかかっていないのかもわからない。 「……」  元の自宅を懐かしむ余裕はなかった。  逸る心臓を抑えながら靴を脱ぎ、ユウヤがいると思われるトオルの自室へ行く。  階段を上がったすぐの部屋。そこがトオルの部屋だ。  念のため、扉に耳を当てる。かすかだが何かが動いている音が聞こえ、トオルはゆっくりとドアノブを回す。 「ト……、ォル」  トオルの目の前に居たのは、ユウヤだった。  一瞬、ユウヤがいたことに安心したものの、その安心はすぐに吹き飛ぶ。  ユウヤは、裸だった。腕をベッドの柵にロープで縛られ、目にはアイマスクをされている。  下肢には、太いバイブが突き刺さっており、無理やりいれられたせいかベッドのシーツには赤い血が染みていた。  そのあられもない姿にトオルの頭は真っ白になり、ユウヤに駆け寄る。 「ユウヤ!!」  トオルは急いでユウヤのアイマスクを外した。  視界が明るくなったユウヤは目の間にトオルがいるとわかると叫びだす。 「トオル!」 「ユウヤ、ユウヤ!」 「逃げて!」 「まずユウヤが先だろ!」  トオルはユウヤの腕を縛るロープを解こうとするが、硬く結ばれたロープは特殊な結び方で結んでいるらしく、トオルの手だけでは解くことが出来ない。  何かハサミなどで切るしか紐を切ることが出来ない。  その時、ユウヤの声が部屋に響いた。 「だめ! 早く、早く逃げて!」 「いいから! ユウヤ、ハサミはどこ!?」 「逃げて! いいから!!」 「ユウヤ!」  急に叫びだしたユウヤに困惑しつつもトオルは机に行き、ハサミを探し始める。  トオルの記憶では机の上の筆記用具入れに入っているはずなのに、ハサミが見当たらない。  早くユウヤを開放しなくてはと焦る気持ちから、トオルは机の上に置いてある本やペン立てを手当たり次第ひっくり返す。 「ユウヤ、すぐに解くから!」 「来るな! 来るな!」 「ユウヤ、落ち着い――」  振り向いたトオルの前に居たのはアリユキだった。  後ろにはシュウとリクもいる。  突然現れた3人にトオルは声が出ず、体の力が抜ける感覚がした。 「な、なん……で」  かろうじて出た言葉はそれだけだった。  なぜ、なぜここに3人がいるのだろうか。トオルとユウヤの事など3人は知らない。  なのに、この場にいるというのはどういうことなのだろう。 「やっぱりか」  目の前のアリユキが驚いたように言う。その後ろのシュウもリクも平常とはいいがたい表情をしている。その表情で、トオルは察した。 「あ……」  ばれた。ばれたのだ。  トオルとユウヤの事が、この3人に。 「ッ!」  トオルは慌てて部屋を出て行こうとする。だが、それは叶わなかった。  アリユキをすり抜け、リクの方をすり抜け逃げ出そうとした時、リクの手が高速でトオルの腕を掴み、トオルを腕の力だけで床に叩きつけたのだ。 「ウッ……!」  準備もなく叩きつけられ、トオルは肺の中の空気が全て押し出される。  目の前が回る。頭を打った。  逃げなくてはいけないのに、ユウヤを助けなくてはいけないのに、トオルは起き上がることが出来ない。  回る視界が暗くなる。  ユウヤの叫ぶ声が聞こえる。トオルはそれを聞きながら、意識を手放した。
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