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シュウ
「な、なんでも、ない」
「けどよ、本当に体調が悪いなら今日も休んだほうがーー、おい、シュウ! どう思う?」
トオルたちの様子を少し離れたところで見ていた男子が名前を呼ばれてこちらに向かってくる。
リクほどではないがそれなりに背が高いその男子生徒は、トオルをリクと同じように見下ろす。だが、その見下ろされる時の威圧感がリクよりも強い。
なんとなく、トオル含めたこの4人の中で目の前の男子がリーダー格だとトオルは察した。
彼は三浦修。ユウヤはシュウと呼んでいる。
トオルの印象では、シュウはユウヤと一番仲の良い、そんな印象だ。ユウヤと同じくらいルックスが整っており、生徒会にも入っている。
アリユキのようなひょうきんさも、リクのような冷たさもないがシュウは先生からもクラスメイトからも信頼されていた。
だが、こんな冷たいナイフのようなシュウをトオルは知らない。
見下ろすシュウはトオルの頭上からつま先まで視線を向けた後、口を開いた。
「ユウヤ、体調はいいのか?」
「……大、丈夫」
「放課後も、大丈夫だな?」
放課後。ユウヤを含めここにいる全員は特に部活などには入っていない。
何をするのかはわからないが、これ以上変な詮索をされボロを出さないためにもトオルはその問いに黙って首を縦に振った。
トオルの答えにシュウは満足したのか背を向け、アリユキもリクもそれに続くように歩き始める。
「ユウヤ」
「えっ、わっ!」
リクは持っていたユウヤの携帯をトオルに投げ返し、それをトオルは慌てて受け取る。
「1225」
「えっ?」
「パスワードは1225だ」
リクのいう通りの番号を打つと、携帯のロックは簡単に解除され、無機質な待ち受け画面が表示される。
先ほどのことを忘れ、ひとまず、何かあった時の連絡手段が確保され、トオルは思わずホッとする。
顔にもそれが出てきたのがリクにはわかったようで、安心気な顔をしたトオルにリクは眉をひそめた。
「おーい、ユウヤ、リク、学校行くぞ」
先に歩いているアリユキに呼ばれ、トオルも急いでアリユキたちの元へ向かう。
トオルの後ろに続いて歩くリクの視線を逃げるように感じながら、トオルはアリユキたちの元へ駆け寄った。
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