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「で、何の話だっけ?」
「えっと、だからぁ……割れちゃった卵の話だよ」
「ああ、そうそう。だから、俺が今日買ってきたのは鶏の卵だけど、もしもスーパーに奈緒が産んだ卵のパック詰めが売ってたとしたら、そりゃあ勿論自転車の前かごなんかには入れないで、大事に抱えて持ち帰るよ」
啓司が小脇に抱えるポーズをして、妄想話を繰り広げる。
「私カモノハシじゃないし、卵は産まないからーっ!!」
奈緒は声を上げ、体をよじって笑った。
啓司といると、毎日が面白可笑しくて仕方がないのだ。
「卵は時々割っちゃうかもしんないけど、買い物は行くし、飯も作るし、風呂掃除だってするから……」
「本当? そんなこと言っちゃって大丈夫?」
覗き込む奈緒にふわりと微笑んだ啓司が、大きな体で奈緒を優しく包み込む。
その瞬間に、奈緒からも大量のオキシトシンが溢れ出たに違いない。
「うん。だから……元気な赤ちゃん産んでくれよな」
【完】
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