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よく考えずに口走ってしまうのは自分の悪い癖だ、と奈緒は思う。後になって、言わなければよかった、と反省することが多い。
「あーっ、割れてるじゃん!!」
帰宅した夫の啓司からレジ袋を受け取った奈緒は、中から卵のパックを取り出し声を上げた。
「一、二、三……四、五個も!?」
「え、そんなに? ごめん……」
驚いた様子で卵のパックを覗き込んだ啓司が表情を曇らせたのを目にした奈緒は、罪悪感に駆られた。
悪気なく口にした言葉だったのだが、買い物を頼んだ相手に対して言うべき言葉ではなかった、と臍を噛む。
「自転車の前かごに入れてた?」
「ああ……うん」
「じゃあ、きっとあそこだよ。工事中のでこぼこ道。パン屋の前のね」
「あ、そういえば、かごの中で二、三回跳ねてたな」
啓司が気まずそうに額を掻いている。
「まあいっか。啓ちゃんのおかげで、今日は卵たっぷりの贅沢なオムライスが食べられるしね」
奈緒がそう言って表情を緩めると、漸く啓司が笑顔を見せた。
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