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啓司との交際期間は一年足らずだったが、プロポーズを受けた時は何の不安も迷いもなく、この人で間違いない、と奈緒は確信していた。
出会いは親友の結婚パーティーだった。
奈緒は新婦の、啓司は新郎の親友で、互いに友人代表として挨拶をした。
会場の全ての視線を一斉に集め、始めこそ緊張しているように見えたが、心温まるエピソードにユーモアを交えた啓司のスピーチと人柄がとても印象的だった。新郎新婦の幸せムードと相まって会場全体が幸せオーラに包まれた。
次に順番を控えていたにもかかわらず、感極まって涙していた奈緒が、そのままマイクの前に立ち二人の結婚を心から祝福したスピーチも、ある意味印象的だったかもしれない。
「奈緒に会いたいって言ってたよ」
新婚旅行土産を持って自宅を訪れた幸せいっぱいの二人から啓司の話を聞かされた奈緒は、驚きを隠せなかった。
涙のスピーチを見られていた恥ずかしさと、好印象を持ってくれていた嬉しさとが交錯していた。
奈緒も啓司に対して好感を抱いていたからだ。
「私も会いたいな」
そして幸せな二人に取り持ってもらい、交際をスタートさせたのだった。
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