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彼女の実の父親、長谷川考希さんは50代後半の男性で現在新潟の田舎で再婚した女性と子供と一緒に暮らしている。一樹もどうしようかとかなり迷ったものの、彼は凛桜の唯一の肉親。結局凛桜との結婚を伝えることにした。
「会うも会わないも君の自由だ。でもお父さんが隣の控え室で待っている」
一樹は彼女の手を取ってじっと返事を待った。自分でも正しい事をしたのかわからない。一瞬彼女の瞳が揺れたものの凛桜は一樹を真っ直ぐに見つめ返した。
「会います」
「……わかった。泰斗、悪いが長谷川さんをここに案内してくれ」
泰斗が紬と一緒に出て行き、まもなく長谷川さんがドアの前に現れた。凛桜は母親似なのかあまり長谷川さんとは似ていない。でもよく見ると口元や目などがなんとなく似ている。
「お父さん……」
「凛桜、大きくなったんだな。詩織に似ててとても綺麗だ。詩織と結婚した時の事を思い出す……」
長谷川さんは綺麗な花嫁姿の凛桜を見ると涙を浮かべた。
「ごめんな。あの頃本当に俺はろくでもない父親だった。詩織と凛桜を失ってから何度も後悔した。特にお前の事はずっといつも頭の片隅にあったよ。凛桜と同じ年頃の女の子を見るたびに今頃どうしてるのかなって。でもまさか詩織が亡くなってたなんて知らなかった」
長谷川さんは俯くと肩を震わせた。
「一人で随分苦労したんだな。本当にごめんな」
「……お父さんは今どうしてるの?」
「10年前子連れの女性と再婚したんだ。今は新潟の田舎にある小さな会社で働いてる」
それを聞いた凛桜はすこし寂しそうで、でもすこしほっとしたような笑みを浮かべた。
「そっか。よかった……」
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