1人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の木とおばあちゃん
両親が共働きだった私は、小さい頃から
おばあちゃんの家で過ごす事が多かったので
おばあちゃんっ子に育っていった。
いつも優しい笑顔で「おかえりなさい」と
迎えてくれるおばあちゃん。
学校で嫌なことがあって泣きながら帰った日は、
優しく抱きしめてくれて頭を撫でてくれた。
ずっとおばあちゃんと暮らせると思っていたある日
病気で突然、入院することになってしまった。
私は、毎日学校の帰りに病院に行き、
今日あった出来事をおばあちゃんに
寄り添うようにくっついて話した。病院生活が
楽しくなるように、早く元気になるように。
でも…願いは届かなかった。
満開の桜が咲く中、桜のように綺麗で
優しいおばあちゃん。
私の誇りだった祖母は亡くなってしまった。
それ以来、桜を見る度に優しかったおばあちゃんを
思い出し悲しくなるので桜が咲く季節が嫌いだった。
みんな、お花見などで盛り上がってる本当は
楽しい季節なはずなのに…心が苦しい年月が続いた。
新社会人の入社式に見た桜は、新しい道に
胸が高なるかな?と思っていたが、やっぱり祖母を
思い出し悲しくなる。
それから何年か経ち、職場の同僚に惹かれて
付き合うようになった。付き合うになり
5年目の春…。
満開の桜が咲く、木の下で
「僕と結婚してください」と告白してもらった。
凄く、凄く嬉しくてその日みた桜は初めて
幸せな気持ちで見れた春の桜だった。
そして3年が経った、春の日。桜が満開に
咲き誇る中。私達に双子の赤ちゃんがやってきた。
幸せだった。病院から桜を見ながら、
私はきっとおばあちゃんが私に、桜を好きになって
貰う為にくれた最後のプレゼントなんだと、
その時に感じた。
今では、桜が咲く春の季節が1番
好きな季節になっている。
最初のコメントを投稿しよう!