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チクッたん誰や
今回の登場人物。
竹林許三造(50代男性独身おそらく童貞)
転職歴は数え切れず履歴書に書き切れない。
介護の仕事は50代になって初めてしている。
介護歴は4ヶ月ほど。
「竹林さん、ちょっといいかな」
「えんたろーさん、なんでしょうか?」
「竹林さんのオムツ交換の後は失禁が多い、一度俺が教え直すよ」
「いや、そんな事は・・・あれ・・・おかしいな。誰がそんな事を言ったんですか!!!」
「なぜ怒る?」
「いえ、怒ってるわけでは・・・」
「じゃあでかい声を出すな」
「すいません」
「で、誰が言ったとかそういう問題ではない。竹林さんの後は失禁が多いというのが問題点だ」
「それは誰が言ったんですか!!」
「・・・おい」
「あ、佐藤さんかな?山田さんでしょ?」
「おいっ!!」
「ひえっ⁉︎」
「お前は人の話を聞いてないのか?」
「・・・・・・そ、そういう訳では」
「そんなに誰が言ったか気になるのか?」
「え、ええ」
「全く、本題から逸れるがそんなに執着してるならそっちも解決しないとな。気になる理由を言ってみ」
「だって、だって、裏切りじゃないですか!同じフロアの人間のミスを上にチクるなんて」
「たわけ」
「え?」
「同僚てのは友達でも仲間でも無い、絆も情も恩も無い。求められるのは職務を果たす、それだけだ。チームワークや協調性を上が求めるのも職務の為だからだ。だからそもそも裏切りとかいう生温い概念を持ち出す竹林さんがそもそも間違ってる」
「・・・・・・」
「分かる?本題は、竹林さんが職務を果たせていない。だから、俺が再指導する。それだけの事だ」
「・・・・・・」
「さっきからダンマリだな、何とか言ってみましょうか」
「・・・あ、貴方は冷たい人だ。言い方も偉そうだし、目上の人に対する態度ってものがなってない」
「たわけ」
「ま、また!」
「俺は優しく言えば伝わる人間には丁寧に話す。だがお前は注意を受けても密告者が誰かとか、見当違いな解釈にとらわれて話にならんから、こういう言い方にしてるんだよ」
「・・・」
「この後、誰が密告したか自分で探そうと思ってるだろ?」
「うわ⁉︎な、なんで分か・・・」
「バレバレなんだよ、お前は人から何言われても反省したり、悟ったらするタイプじゃない。いいか?辞めるつもりじゃないなら俺の指示には絶対従え。俺の指示は2つ、俺から技術指導を受け直す事、密告者を探さない事、分かったか?」
「・・・・・てやる」
「ん?」
「辞めてやるよ!じゃあ!お前みたいな・・・」
「おいっ!!!!」
「ひえええ!」
「なんで俺がお前如きにお前呼ばわりされなあかんねん」
「ひっ・・・」
「辞めるのはご自由に、その前に俺に『お前呼ばわりしてすいません』って謝れ」
「あ、あの・・・」
「なんや?早く謝れ」
「すいません・・・でした」
「まあ、ええわ」
そんな出来事が1年ほど前にありました。
そして現在。
「えんたろーさん、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様です」
「これ旅行の土産です、えんたろーさんだけ特別っすよ」
「いや、だからそういうのいいって言ってるでしょう」
「いえいえほんの気持ちっすから。これからも宜しくお願いします」
はい、竹林さんは今も私の下で働いてます。
ただ・・・どういう心境?
読心術には多少心得があるのですが、今は彼の心が読めません。
そのうち寝首でもかきにくるのかな?
いや、わからん。
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