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愛ラブ息子編④
身長179㎝のえんたろーよりさらに体格のでかい莫迦くん。
「おるんやったら最初から出てこい、まあお前の行くところはパチンコだけやろうけど」
「な、な、な、なんやとっこらーーーっっっ!!」
「で、なんや?俺はお前に用なんかないぞ、ここのアパートの退去期限は月末までやからさっさと出て行けよ。じゃあな」
「ままま、待てっ!!」
無視。
オドオドとしていて、どうしていいか分からず流される須子さんの背中を押して立ち去ろうとするえんたろー。
「待てやあーーーーー!!!」
体格があるだけに叫び声もでかい、さすがに近所迷惑になるので無視を諦めるえんたろー。
「なんやねん?うるさいなあ」
「母さんを連れて行くな!!」
「寝言は寝て言え」
「んあっ⁉」
まさかそんな切り返しが来るとは思わなかったのか絶句する莫迦くん。
オロオロオドオドと私どうしたらいいの?としている須子さん。
面倒くさいですが、まだまだ言葉が必要なようです。
「疲れるわ・・・ほんと。いいか?さっきも言ったけど、そもそも貴方ら親子が今もこのアパートに入れるのは大家さんの慈悲や。それから須子さん、貴方が俺らに保護されるのも幸運な事なんやぞ」
「え?え?そそ、そうなんですか⁉」
「全く。貴方らみたいな生活環境の親子、日本にゴマンといるわ。そのほとんどが放置されているか、役所も手が回らないかのどっちかや。なのに須子さんは冷暖房完備の個室で生活しながらパートもせずに借金まで返せるんやぞ」
「あら・・・」
゛言われてみれば確かに良いわね゛という顔になる須子さんですが・・・
「俺はどうなるねん!」
今度は息子の相手です。
「お前いくつや?」
「さ、32や」
「病気も障害もなくて32歳なら日本のどこでも生きていける、無駄にでかい体もあるやろ」
「お、俺は働けへんねん!!」
「なんで?」
「なんでもや」
「話にならん」
「お、お前さっきから偉そうに調子乗んなよ。俺はお前をぶっ殺してでも母さんを連れていく事は認めんぞ!!」
「ほう」
莫迦くんに一歩詰め寄るえんたろー。
「なななな、なんや!」
「小僧、調子に乗るなよ」
(※この時えんたろーも30代なので歳は変わらない(笑)口癖です)
「な、な・・・」
「ぶっ殺す?そのセリフ吐く奴、今まで何人も何回も見てきたがどいつも例外なく小心者のクズばっかりやったぞ」
「うあ・・・」
少し睨まれただけで蛇に睨まれた蛙になる莫迦くん。
低く重い口調に変えながらさらに1歩近づくえんたろー。
暑いからなのか冷や汗なのかは分からないが古いアパートの木の床に莫迦君の汗がポタポタ落ちる。
えんたろーの人生の軌跡はアウトローなクズの道。
すぐキレる人、怒る人、手を出す人など呆れるくらい見て来たし相手にしてきました。
まあ、そんな人生送って来たくは無かったですけどね。
いくら体格がでかかろうと莫迦くんからは何の迫力も圧も感じません。
「おい」
「は、はい」
ごくりと唾を飲む莫迦くん。
「福祉課に話しといてやる」
「へ?」
「だからあ、福祉課の○○さんってのを訪ねろ、これからの事について最低限の事はサポートしてもらえる様にしておく。住所無いとバイトも出来んからな」
「あ・・・は・・・はあ・・・」
「何年もニートしてれば外が怖くなるのは分かる。だけど現実としてもうこのアパートには住めないし、お母さんの須子さんは持病があるからお前の面倒は見れんのや、受け入れろ」
「・・・・・・」
「元気な以上、働くしかないんや」
「うう・・・」
「これ以上喚ていも無駄な事は分かったよな?」
「・・・・・・」
「返事しろ!」
「はははは、はい」
「じゃあ、須子さんは行くからな。お前は役所に行けよ」
「・・・・・・」
「返事!!」
「はい」
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