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けれど僕は、彼女が抵抗できないモノに当たり散らすのは好きではなかった。
でも傍にいなければ、壊すときの笑顔を見ることはできなかった。笑顔はすぐに、散ってしまうから。
何の罪もないモノが、彼女の傍で壊されていく。彼女が罪を犯す度、彼女の顔に笑みが咲く。
止める理由がなかったんじゃない。止めない理由があったんだ。
だから、いつも。
やめなよ、と僕は言った。
壊した後の、彼女の笑顔に。
どうして? と彼女は言った。
ごめんね、と僕は言った。
壊された後、ナンデ? と戸惑うモノたちに。
ぶりっ子ちゃんだね、と彼女は言った。
共犯では、ないと思う。だけど傍観者でもなかった。僕は静観していたし、望んで間に入っていた。
そうして少しずつ、少しずつ、彼女のことが好きではなくなっていった。
彼女の笑顔は、変わらずに好きなまま。
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