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腕を組んでくる彼女と並び、他愛のない会話をしながら桜並木を歩く。
車へと戻り、遠くなった桜を見ながらエンジンをかけようとした時、彼女が口を開いた。
「ねえ、これからどうする?」
「別れよう」
驚いた。あまりにも自然に口から出た言葉だったから。
いつの間にか握りしめていた無意識の言葉を、気づいたら放り投げてしまっていた。
ハッとして彼女を見ると、表情が固まっている。そして、ぴしっ、とヒビの入った音が聞こえた気がした。
みるみる眉間に皺が寄り、歯が剥き出しになる。彼女にストレスが溜まったときの、見慣れた、かわいくない顔だ。
今日は僕が、彼女の整った顔立ちを壊したのだと思った。ただ違うのは、彼女は無抵抗ではなくーー
「イヤッ!」
拒絶して、両手で僕の首を絞めてきた。
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