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彼女はモノを壊すことで快感を得る人だった。ストレスが溜まってくると、何かを壊して発散したくなるらしい。特に無抵抗なモノに対してその傾向は強かった。
壊しながら、笑顔になる。壊しているときだけ、笑顔になる。
少し前にも、僕が出張のお土産で買ってきたカステラの紙箱を、顔がムカツクと言いながらビリビリと破いていた。仕事が上手くいかないストレスがあったらしい。
箱に描かれていたカワイイご当地キャラがかわいそうな姿になったので、彼女に内緒でセロテープで修復し、押し入れに隠した。彼女にバチが当たらないように、ごめんね、と代わりに謝って箱を撫でた。
今でも忘れないように、たまに取り出して眺めている。
忘れないように。
彼女の笑顔を、忘れないように。
僕は、彼女の笑顔が好きだった。
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