ホワイトの階調

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 赤坂はオリエンテーションの壇上で、小芝が得体の知れない白い煙を吹き出させる実験をやったのを思い出す。  結果から言うと想像以上の大量の煙に小芝の姿が完全に隠れ、一体何の実験をしているのかさっぱりわからないまま時間いっぱいとなり終了した。  しかしそれだけでは終わらない。次の出番だった吹奏楽部が楽譜であおいで煙を飛ばしたことで、運悪く火災報知器が作動し、体育館は一時騒然となったのだ。  かなりのインパクトを残したオリエンテーションだったが、教師陣の心証はすこぶる悪かったようだ。 「小芝はそれなりに熱心な生徒ですが、実験以外には全く興味を示さなくて。科学部の伝統を思うと、もう少し真面目に勧誘でもしてくれればと思ってるんですがね……化学の藤咲(ふじさき)先生もどうも話が通じないし」  赤坂は苦笑いした。だいたいの想像はつく。 「それで、科学部出身の自分に説得しろと、そういうことですか」 「お願いできますか」 (もう断れる雰囲気じゃないじゃん)  赤坂は心の中だけで大きなため息をついて言った。 「わかりました。お力になれるかどうかはわかりませんが、一応話はしてみます」 「いやぁ、助かります。赤坂先生なら引き受けてくださると思ったんですよ」 (調子いいな、この!) 「今ちょうど活動時間なんで、今から科学室へ行かれてはどうですか?」 「ははは、そうします~」  死んだ目をしたテンプレの笑顔で、赤坂は追い立てられるように席を立った。
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