ホワイトの階調

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 しかしそこは、どこにも所属できないと感じていた赤坂が最後に流れ着いた場所だったのだ。  所属やカテゴリを超える何かが、確かにそこにはあった。様々な個性が否定し合うことなく輝いてた。その賑やかだった煌めきが、今やたったひとつとは確かに寂しい。 「そうだ、入部希望とかあった?仮入部でもいいからさ」 「いえ」 「ひとりも?」 「はい」 「そっかー。小芝君のオリエンテーション、良かったと思うけどな」  結果はともかく、赤坂は本心からそう言った。 「俺は、部でも同好会でもどちらでもいいです。実験さえできれば」  小芝は紙皿のべっこう飴もどきを指でつまんだ。口の中でカリカリと音を立てる。 「そうは言うけどね、同好会だと生徒会費が下りないし、活動も制限されるよ?生徒指導の茅野先生も、今年新入生が入ってくれれば来年度からはまた部に戻したいって言ってるし、勧誘頑張ってみたらどうかな?来年はもう卒業しているから小芝君には直接関係ないかもしれないけど、やっぱり自分が所属していた部が人員不足で廃部になるのは寂しいことだよ」 「なるほど、わかりました」  少しは部員数を増やすことに力を注いでもらいたいと思ったが、小芝の心に響いたようには見えなかった。 (まぁ一応話はできたし、あとは同じ話を藤咲先生にすれば任務完了ってことで) 「それにしても藤咲先生、遅いなぁ」  赤坂は窓際に移動し、外を眺めた。もしかしたら煙草を吸っている藤咲を見つけられるかもしれないと思ったが、残念ながら近くには誰もいない。首を伸ばすと、意図せず校庭を縁取る桜並木が見えた。風が残りわずかな花びらを散らす。  赤坂は思わず顔をしかめた。一年のうちで2番目に嫌いな風景だ。1番は満開の桜並木。 「ほんと、大っ嫌い」  気付いたら口に出していた。実験道具を片付けていた小芝が手を止めてこちらを見ている。 「あ、ごめん、思わず、ね。小芝君のことじゃないよ。……桜がね、嫌いなんだ。見てるだけでこう、気が滅入るっていうか」
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