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「お待たせー! 待ったー!?」
改札を抜けて、活発そうな女の子が俺に向かって一直線に走ってくる。亜衣だ。
「遅っせーよ!」
「えー! どうせ大輝だって今来たばっかりなんでしょ?」
「バレたか」
へへ、と俺は笑う。
詩織と別れてから慌てて待ち合わせ場所に来たのだが、少し遅れてしまった。だが、待ち合わせの場所には亜衣の姿はまだ無かったのだ。仕方ない奴だ。
俺も遅れているのだから人のことは言えないが。
詩織だったら、絶対に先に来て待っていてくれる。
だが。
「なにぼんやりしてるの? ほらほら、行こうよ!」
亜衣が俺の手を取って走り出す。
「こ、こら。危ないだろ!」
「なに言ってんの。時間限られてるんだからさ! 楽しまないと」
振り向いてにっこりと笑う。
亜衣はこういう屈託の無いところがめちゃくちゃいい。
がさつっぽくて女らしさというものが無いように見える亜衣だ。だが、手の柔らかさは完全に女の子で、そのギャップにやられる。
「今日はラウンドワン行く約束でしょ! へとへとになるまで付き合ってもらうんだからね」
「お手柔らかにな」
俺は苦笑する。
けれど、可愛い女の子と思いっ切り汗を流すのも悪くない。こういうのは詩織とは出来ないことだ。
だから、どっちも捨てがたい。
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