ぷろろーぐ 宇宙から来ました

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ぷろろーぐ 宇宙から来ました

「お先に失礼しまーす」  とある春の日。仕事を終えた俺は、いつも通り職場を後にして帰路についた。街行く人々を横目に見れば、真新しい制服を着た中高生、ピカピカのスーツでキメてるのは、新社会人?いや、入学式帰りの大学生か。とにかくそういう新しい雰囲気、新しい風を、外に出て初めて感じる。社会人になってしばらく経つと、そういうのはほぼなくなってくからなあ。 うちの職場は、大きくも小さくもない出版社で、長く仕事を続ける人が多く、新入社員が来たとしても数年に一度って感じだ。本年度もよろしく、なんて言葉だけで、年度を跨ぐといったってなんの変化もないのだ。 まもなく、職場から徒歩15分ほどの場所に借りている賃貸アパートに到着。適当に鞄を部屋に投げ入れて、楽器ケースを背負って再び靴を履き直した。その足で向かったのは、近所の公園。本当になんの変哲もない平々凡々な公園で、子供たちが遊ぶ遊具のある広場と、ちょっとした球技を行うことができるフェンスに覆われた球技場。そして、大きな桜の木に囲まれた、こもれび広場で構成されている。俺はこのこもれび広場で楽器を弾くのが好きで、退勤して日が落ちるまでの少しの間ではあるけれど、今日もこうして楽器を構えている。  誰が聞いてるわけでもないけど、外の空気を吸いながら演奏するのが好きだ。たまに通りがかる人々が耳を傾けてくれたり、話しかけてくれるのも、心が豊かになる感じがして気に入っている。
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