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第1話 忍び寄る魔の手(1)
メイシアの膝に頭を預けたルイフォンは、子猫が母猫に甘えるかのように、彼女の服の端をぎゅっと握っていた。小さな寝息に合わせ、彼の胸がゆっくりと上下する。
そんな彼の寝顔を、メイシアは飽きることなく見守っていた。
そこだけ空間が切り離されたかのような、穏やかな時間が流れていた……。
――ふと、ルイフォンの胸の動きが止まった。
メイシアが、あれ? と思うと同時に、階段の方向から勢いのある足音が響く――。
ドアノブが動いた刹那、ルイフォンが一瞬のうちに身を起こし、メイシアを引き寄せた。
「え? ル、ルイフォ……」
ルイフォンは、素早くメイシアを抱きかかえ、ベッドの影に身を隠す。小さく身をよじる彼女を胸元に置き、彼は息を潜めた。
「ルイフォン!」
ノックもなしに大きく扉が開き、スーリンが転がり込んできた。
「え……?」
もぬけの殻のベッドを前に、スーリンが絶句する。
立ちすくむ彼女の姿を認め、不意の襲撃ではなかったことに安堵の溜め息をついてから、ルイフォンは立ち上がった。
「何があった?」
「ごめんなさい! 緊急事態なの! トンツァイさんが至急、知らせたいことがある、って」
ルイフォンの表情が一変する。彼は「分かった」と短く答えると、すぐに階下へと走りだした。
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