女心と春の朝

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「うちもさ、愛美んちが焼肉行ったってだけで不満たらたら。そんなん、お互い何食ったっていいじゃんって感じだよなー」 「そう!こないだ、隆也んち『ピザ』の宅配とったでしょ?あれもね、うちのお母さんたらわざわざ配達させるなんて自分が料理手抜きしてるって周囲に言っているようなものじゃないって。おかしいでしょ、いいじゃん、ピザ!私も食べたい!」 あれは小中学生の従兄弟が遊びに来たときのやつだな。 普段とらないピザを注文して、結構高くついたってあとからおふくろがぼやいてたやつ。 何で張り合うんだろうな、大人って。 「なのに、買い出しやゴミ出しで会うと、お互いすっごく褒め合ってるでしょ。聞いてて気持ち悪いったら。大人の付き合いってどうしてこう見栄が必要なのかな」 おふくろが家で愚痴や不満を吐き出すのと同じように、自分の親の愚痴を吐き出しながら歩く俺ら。 時々手の甲が触れるのが何だか気恥ずかしくて嬉しい。 「あ、あのさ、愛美って塾行ってる?」 聞いてみれば、越してきてまだ1か月だから行っていないという。 「俺と同じとこ通わん?てか、俺が通ってるって知ったら、愛美のお母さん大反対するかもだけど」 「・・・・・・ううん、いいかもしれない。隆也が行ってるのにうちが行けないっての、お母さん悔しがるだろうから。ただ、隆也よりいい成績取れって言われるだろうけど」 「あー、言いそう。俺んとこも愛美よりいい点取れって。絶対張り合う」 「でもって顔を合わせると、お宅の息子さんお勉強ができ羨ましいわって」 「お宅のお嬢さんこそいい成績でって」 同じようなことを言って、俺たちは思いっきり笑った。 おふくろたちには悪いけど、おふくろたちの妙な張り合いをネタに俺と愛美は今日も仲良く話が出来るってもんだ。 サンキュー、おふくろ。 これからもほどほどに女同士の戦いってもんを繰り広げといてくれ。 俺と愛美はバス停までの距離ずっとしゃべり通しだった。 高2の春、俺たちはリア充満喫!最高! 終.
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