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もうこの国にきて
六年たつけど
毛蛋(マオタン)だけは食べれないなあ
鴨の顔とか鳥の手とかは
大好きになったけど
毛蛋(マオタン)はちょっと手がだせないなあ
毛蛋(マオタン)っていうのは孵化する前の有精卵を
ゆで卵にした食べ物
孵化する寸前なんで卵の殻を割ると毛が生えていてるから多分こういう名前になったと思う
最近知り合いになった細川さんはどんな食べ物も大好きで
毛蛋(マオタン)を食べるためにわざわざ遠いところに住んでいる知り合いから調達している
僕はこの食べ物は残酷すぎるというと
細川さんは人間はいろんな生命を奪ってすでにいっぱい食べている
毛蛋(マオタン)だけ特別扱いするのはおかしいといって
おいしそうに毛蛋(マオタン)を食べている
その通り
人間は他の動物を殺傷してたべている
確かに人間の欲望ははてしなく
必要以上に他の生命を奪って食べている
今更 毛蛋(マオタン)だけ特別扱いするのもね
でもなんかいやなんだよね
多分なんのチャンスもないまま
いろんな奇跡の末にやっと生まれてくる生命を
ゆで卵にしちゃっているのが不憫に感じるんだろうね
生まれてきてなんかを経験してからならまだ少しね
でもよく考えたら
生きているという意味さえもわからずにゆで卵にされているのは
本人も悲しいもなにもわからないだろうなあ
僕らはいっぱい経験して
いろいろ知識を得て生にしがみつているから
そのように考えるのかなあ
そこまで細川さんは考えてたべているのかなあ
多分そうなんだろうなあ
いろんな知識
いろんな経験
触れ合い
なにもできないままゆで卵にされた毛蛋(マオタン)
いろんな知識
いろんな経験
触れ合いをしてきた40年生きてきた僕
毛蛋(マオタン)はなにもできなかったけど
僕はなんでもできるはず
今この瞬間をいきれるはず
自分の周りに張り巡らせられた
親から与えられた名前のどおり生きるという常識の殻を
打ち破って
このひと時を享受できるようになるはず
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