桜は私のものなのに

2/26
前へ
/26ページ
次へ
 優しかったはずの父だが、その日から私に会いたがらなくなった。  家に行きたいと電話をしてみたが、忙しいから邪魔をするなと怒鳴られた。  それからも何度か電話をしてみたが、最初の一度以外は出てさえくれず、いつのまにやら携帯を変えたようでつながらなくなった。  父も母もお互い憎悪に近い感情を持っているようだった。  それに私たちが巻き込まれた形だが、母と一緒に私も父の敵と思われてしまったのかもしれない。  それもこれも私に母を押し付けたサクラのせいだと、私は彼女への憎しみを強めた。  家の番号はもちろん知っていたが、サクラが出るかもしれないと思うとかけられなかった。  二人になってしばらくは母も優しかった。  しかし、働くのが初めてだった母は、なれない仕事に追われ日に日にやつれていき、ついには笑わなくなった。  それでも私には優しかったのだが、ある日を境に母は急に変わってしまった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加