桜は私のものなのに

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 小4の秋、両親は離婚を選んだ。  サクラは父、私は母に引き取られ離れ離れになった。  せめて一年に一度は一緒に過ごそうとサクラが言い出し、桜と桃が美しく咲く二人の誕生日のころに毎年顔を合わせている。  生まれた記念にと父がくれた桜と桃の木は、庭に並んで植えられていた。  母は桃の木を鉢に植え替え新しい家に運んだが、根を痛めてしまったのか鉢の中で枯れてしまった。  私は桃の木が好きではなかったので、枯れて花が咲かなくなったことにほっとしている。  桜の木は父とサクラの住む家の庭で、今も毎年淡いピンクの花を咲かせているのだろう。  その桜の木を思うと複雑な気持ちになり涙が出そうになる。  母に手を引かれて家を出て以来、見ることさえできていない。
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