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第三話 「かくれんぼ」
scene-1
「俺と結衣は腐れ縁ですよ」
そんな古い言い回しで圭介が言うのを、片耳で聞いていた。サークルの飲み会。圭介は先輩達に囲まれ、彼女である私との馴れ初めを尋問されている。私は私で後輩の子達と女子トーク中。
腐れ縁かぁ‥そうだよね、幼馴染だし。
でも、私はあの日決めたんだ。圭介、あなたにね。
scene-2
小学校に入ったばかりの頃、近所の子達と公園でかくれんぼをした。一人見つかり二人見つかり‥でも、鉄棒の後ろの草むらに身を潜めている私を、鬼は見つけてくれない。
やがて、陽が暮れてきた。お母さんたちが迎えに来て「またね」「バイバイ」と言う声が聞こえる。そして、私だけが取り残された。
scene-3
だんだん暗くなる公園。
私もお家に帰らなきゃ‥でも、遊具のシルエットが怖くて動けない。しゃがみこんだ足が震え、涙が出てきた。その時だ。
「何してんだ?オマエ」
ふと見上げると、サッカーボールを手にした見知らぬ男の子が立っている。
それが圭介だった‥そう、あなたが私を見つけてくれたんだよね。
scene-4
運命と呼ぶには幼過ぎる。勿論、圭介に話したこともない。「何だそれ?」多分そう言うし、それでいい。うまく説明できないけど、私は‥私を見つけてくれたあなたがいい。
「結衣、助けてくれよ」
先輩達の輪の中から、ちょっと酔った圭介が私の名を呼ぶ‥その声を、心地よく聞きながら、私は女子トークを続ける。
end
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